火星のカエル

火星のカエル

「火星のカエル」とは? ]

火星のカエルは、クワを手に、毎日せっせと赤く乾いた大地を耕しています。
休憩時間には、ダウンロードした電子書籍ではなく、少し黄ばんだ紙の本を開きます。

故郷から持ってきた本は、もうほとんど読んでしまい、残りわずかが軽く積まれているだけです。

いつかこの辺境の地に、小さな本屋ができる日を夢見ながら
火星のカエルは、今日も静かに、人類を待っています。

 

娘がまだ小さかったころ、この本好きなカエルを主人公にした絵本を作ったことがあります。

子どもの頃に思い描いた火星は、
海野十三や手塚治虫の作品に出てくるような、空想科学に満ちた未来でした。
幸運なことに、いまこの21世紀になっても、人類はまだその地に降り立っておらず、
火星は、かろうじて未知の星として、静かにそこに在り続けています。

本の世界には、いつも「宇宙」や「永遠」を感じています。
手に取れるほど身近なのに、一生かかってもすべてを読み切ることはできない、
そんな果てしなさが、本にはあります。

火星はいま、手が届きそうな場所になりつつあります。
けれど、たとえ人類が最新の科学とロケットでそこに降り立ったとしても、
その輝かしく、どこか懐かしい未来には──
ちょっと仕事をサボって本を読んでいるカエルがいて、
そばには、黄ばんだ紙の本が、こそっと積まれていることを願っています。

この棚は、「火星のカエル」のそんな妄想から始まりました。

▼ おすすめ本 ▼

「二週間の休暇」/フジモトマサル/講談社

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